「あなたの野球グローブ、ちゃんと神経通ってますか?」
野球グローブに神経?そんなのあるわけないんじゃないの?
当然ですよね。今までのグローブにはありませんでしたから…。実はこんな変な命題に取り組むことになったのは訳があるのです。
それは、春のほのぼのしたある昼下がりのことでした。親指革命の完成で、お客様からチラホラと「捕りやすい」というニュースを聞くにつけ、悦に入っていた私たちは、1人のお客様の一言で、頭をなぐられたように眠りからさまされたのです。
「なぜ、小指革命は無いのですか?小指にも親指革命みたいなものが、どうしてもほしい!」
お客様いわく、親指革命でボールの捕球が安定して、ブレが少なくなり良かったのだが、「ここぞ!」という時の力が、親指側にはあるが、小指側には無く、そして何か鈍い感じがしている。とのことでした。お聞きすれば、この方のプレースタイルは、捕球時に小指側を大きくにぎり込むアクションをさせるスタイルで、普通のプレイヤーよりも小指側のアクションの「キレ」に対して敏感だったと思われます。
私たちは、この貴重なお客様の「何か鈍い感じ」の一言に注目しました。「親指革命」の完成時には、野球グローブの親指に「骨と筋肉」を内蔵することに成功しました。しかし、しらずしらずのうちに、親指の操作性が向上し「神経の内蔵」という要素をもクリアーしていたのです。これが1人のお客様の 「親指は良いが、小指側は何か鈍い感じ」 の一言で判明したのです。(これも、親指も小指側も両方鈍ければわからなかった事ですが、実にありがたいアドバイスでした。)
親指革命の作成時に、どうして私たち人類が地球上ではじめて「道具」を使いこなすことになったのかという問いに、「親指の進化」に着目した私たちですが、どうもそれはほんのはじまりにすぎなかったようです。それは「チンパンジー」と「人類」の手のさらなる差異にありました。「小指革命」を完成させるにも、やはりここからみていくとおもしろそうなので、早速、その比較を慎重に行うことになりました。
「小指の形状が進化している、人類の道具使いの証拠」
|
またまた登場してしまいました。「チンパンジー」と「人類」の手の比較です。
まず、本題の小指です。このチンパンジーと人類の小指の差はどこにあると思いますか?
写真が小さくてわかりにくいと思いますが、人類の小指は、あなたにもありますので、是非よく比べてみて下さい。
わかったかと思いますが、明確な違いは、小指の第一関節から指先にかけての流れの差です。
チンパンジーは、外側にはりだし気味になっているのに対して、人類のそれは、微妙に内側に(薬指側)に流れていませんか?この指の流れは、私たちのDNAによって個人差がありますが、まずチンパンジーのように外側にはりだしている人は、ほとんどいないと思います。これは何なのでしょうか?チンパンジーの小指は、やはり木登り専用の小指として進化すれば、この形状が安定しているといえますし、人類の小指は、道具を使いこなしているうちに、進化していったと考えるのが自然です。
道具を扱う以上、小指はその道具を確実に保持するための最後のとりでであることが求められます。それにふさわしい形状が少し内向きの指先ポジションなのです。
これを私たちの捕球の道具である野球グローブにあてはめていけば、どのような小指が求められるのでしょうか?考えられることは、
1) 確実に捕球するため、小指の俊敏な動きと反応=「キレ」
2) 4本指の動きのうち、小指が先陣をきれるような、巻き込むような、包み込むような指の動き
ではないでしょうか?これ無しには、進化し続けている私たちの手と指の期待に
こたえていないと考えられるのです。
要の親指とバッチリ正対できる「人類の人差し指、中指、薬指、そして小指」
|
次は、小指のみでなく、小指側の4本指全体に焦点をあててみます。
まず、この親指の指先に注目して下さい。○印のある親指の指先の形状です。なぜ人類の指先は、チンパンジーと違い外側に向いているのでしょうか?
道具を使うということは、親指を使うこと、これは「チンパンジー」と「人類」の絶対的な違いですが、簡単な話、それだけではなく、人差し指、中指、薬指、小指のそれぞれと親指が確実に作動することで「人類の道具使いの完成度」を高めているといえます。
人類の親指の指先は、最初から外側に大きく張りだしているポジションをとることで、他の4本の指ともバッチリ正対できる体制を整えているのです。もちろんチンパンジーの親指では、残念ながらこの動きはとうてい出来ませんし、期待もされてはいません。
この正対する動きをボールの捕球にあてはめてみれば、こんな感じでしょう。
|
|
|
親+小指 |
|
|
|
親+人差し指 |
|
親+中指 |
|
|
|
親+薬指 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
ウェブの先に引っかかるボールはこのスタイルですか? |
|
|
|
こんな捕り方をする場合も内野手にはありますよね |
|
|
|
この捕り方のほうがいいのかな。 |
|
これは外野手に多い捕り方でしょう。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
すべての4本指に正対できるように、親指の第一関節の曲がりかたが微妙に変わっているのがわかります。(写真内の白線をつけてある部分です。)
つまり、親指のこの野球グローブ上での第一関節の動きは、既にGlove Action Adjuster の技術開発で解決しているといえますが、その親指とピタッと芸術的に正対できる絶妙な4本指側の動きがあってはじめて、道具を使いこなせるということです。
今の野球グローブの4本指側(特に小指、薬指)にそれがあるのかが、問われています。
「神経が通っていなくては完成しない、人類の真の捕球文化」
|
何だか小指を中心に親指以外の4本指について、考察していましたら、ばかに難しくなってしまいました。親指以上に4本指は絶妙にて繊細な動きを要求されていると同時に、過激に力ずくでも動いてもらわないと困る!みたいな時もあります。
これも、人類史上、最高の精密機械といわれている私たちの指ですので、当然と言えば当然です。
このような確認事項のもと、私たちが小指サイドの「神経入れ」の手術に没頭したのは、今から数年前のことでした。
あっちをよくすればこっちがダメで、こっちを直せば今度はとんでもないところが病気になる。人類史上最高の精密機械の期待にこたえるのは、簡単ではありません。親指革命と違い、小指革命は特殊構造板を入れるスペースがないこと、特殊構造板は入ったものの、小指が痛くて指を動かせない。おまけにギブスみたいに硬くなってしまったり…等々 予想どおりかなりの難産でした。
それでも最後には、究極の生産方法で完成を見ることができた私たちは、大変幸運でした。
神経が小指にも通うということの驚きは、私たちの想像を絶するものでした。自分自身の親指と小指が10cm位長くなった感じといおうか、自分の手が勝手に大きくなって野球グローブとの一体感が増したといおうか。それでいて親指も小指も少し力を入れるだけで「ピクッ」と野球グローブの指先まで反応する。特に小指側の「キレ」が今迄の野球グローブにはなかった。
これこそ、人類の進化にこたえる「真の捕球道具」です。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
今迄の普通の野球グローブ |
|
これからの極め捕り野球グローブ |
|
|
|
500mlのペットボトルが持てない |
|
|
|
極め捕りなら持てる |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「これまでの野球グローブにごめんなさい、キレのある野球グローブよ、こんにちは」
|
この神経入りの野球グローブに手を入れた後は、どうしても一般的な野球グローブを使う気になれません。申し訳ないのですが、手を差し入れて、少し指を動かすだけでため息がでてしまうのです。今迄の野球グローブは、ただ単なる皮と芯材のゴツイカタマリの手の入れ物にしか感じられず、こんなに野球グローブの指先に自分の意志が伝わらないことが心配なこととはしりませんでした。
「キレ」のある野球グローブの誕生です。
しかし、私たちは創業以来40何年ものあいだ、何千万個の神経の入っていない野球グローブを世界中のユーザー様に提供し続けてきたのです。このことをふりかえると自分で自分がはずかしくなり、穴があったら入りたい気分です。うれしいような、悲しいような大発見でした。
最後に、小指の神経いりの野球グローブの貴重なアドバイスを頂いたお客様に、心より感謝いたします。この改革にとどまらず、これからも野球をもっともっと楽しくするために、前向きな開発にチャレンジしていく所存です。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
事実上、指の長くなった「極め捕り」グローブは、大リーグに進出したい選手の必需品かもしれません。なぜって、アメリカ人のバイヤー様の手の大きさたるや、私たちの手の大きさ、指の長さとは全く比べものになりません。(毎回、商談時に握手するたび驚かされます。)日米野球のボールのサイズは同じですので圧倒的に捕球は指の長いアメリカ人が有利というわけです。日本人プレイヤーの活躍をお祈りするしだいです。
日本人男性の標準サイズは、アメリカ女性とほぼ同じです。日米野球も手の大きさで判断すれば、アメリカ女性(=日本人)VSアメリカ男性みたいなもの。
皆さん、我々日本人は道具でカバーしてこの難関をきりぬけましょう。 |
|